速く走れる靴

「マッハ6」という名前のランニングシューズは誇大広告だろうか。景品表示法では、根拠もないのに性能や品質を実際よりも著しく優れて表示し顧客を誘引することは、一般消費者による合理的な選択を誤らせる可能性があるから禁止されている。タイムを競うスポーツであるマラソンにおいて時間は速度であり、マッハは速度の単位である。この靴を履きさえすれば、自分もマッハ6で走れるようになる。。。とは、よほど常識が欠如している人でなければゆめゆめ思わないだろうから、商品の性能を誤認して購入することはなさそうだ。あちこちのお店で堂々とこの靴が売られているところを見ると、誇大広告には当たらないらしい。
では靴の名前が「25kmh」だったらどうか?
このくらいの速度だと、100mダッシュのウサイン・ボルトが時速45km弱、マラソン世界記録のケルヴィン・キプトゥムは時速21kmと言われているから、肉体的に優れた人ならば全く夢の領域というわけではない。靴の名前に釣られて一般の人が間違って買ってしまうかもしれない。

広告やイメージにつられて、すでにさまざまなウェアや靴を買ってきた。吸汗速乾性能に優れ汗冷えしないと謳われたシャツを着て震えたこともあるし、値段ほどにはゴアテックスマークがついたレインウェアもワークマンのそれも、防水透湿性能に違いはないことを実感している。カーボンプレートが入った靴を履いて得られるスピード感は、”気のせい”の範囲を超えない。

それでも、「マッハ6」という名前には何かしらランナー心をくすぐるものがあるし、名前で商品の性能イメージを拡大することは、それ以外の方法で消費者に性能をアピールすることと比べてとりわけ悪質であるとも思えない。よく見ると「マッハX(テン?)」という靴も売られているではないか。
走り始めて1年半。速度の伸び悩みにぶつかっている人は、マッハシューズに縋りたくなっている。

iPhone 14 Pro

コメントを残す